【報告】軍学共同いらない!市民と科学者のつどいIV

大学関係者と近隣住民61名が参加
 6月22日(土)、関西大学構内で第4回目の「軍学共同いらない!市民と科学者のつどい」が行われました。関西大学9条の会が主催し、科学者会議大阪支部が事務局に参加する「軍学共同いらない!市民と科学者の会・大阪」が後援しました。開催日までに、学内外への案内チラシの配布や大型看板の設置、各種団体への参加呼びかけなどを行い、当日は「スリッパでも来ることができるところ」の近隣の住民も含めて61名が参加しました。

関西大学の取組み
 防衛装備庁が開始した「安全保障技術研究推進制度」に対し、関西大学は2016年12月にいち早く同制度への申請を認めない方針を決定し公表しました。
 「軍民両用技術(デュアルユース)に関する研究費に係る本学の方針について」の学長声明には、同大学の「人間の尊厳、基本的人権や人類の平和・福祉に反する研究に従事しない」研究倫理規範に従い、

  1. 防衛装備庁の「安全保障 技術研究推進制度」への申請は認めない。他大学の申請に共同研究として参画することも認めない。
  2. 国内外の軍事防衛を所管する公的機関からの研究費等の資金は受け入れない。
  3. 企業等からの受託研究等については、その硏究内容が軍事防衛目的である場合は、研究費等を受け入れない。

が明記されました。
 最初に、関西大学法学部の高作教授から、学内の13学部全てで民主的な議論による審議を行い、方針制定に至った取り組みの経過が詳しく報告されました。

安倍改憲と学問の自由について
 続いて、同大学法学部の吉田教授から「安倍首相の改憲発言と大学の自治をめぐる状況」についての報告が行われました。

 憲法の人権規定とりわけ23条の学問の自由とそこに含まれる大学の自治への無理解(憲法そのものへの無理解と言っても過言ではない)な首相の下で、憲法違反と改悪が次々進められている。

 20年前1999年の通常国会は2ヶ月以上の会期延長を行い、周辺事態法、国旗国歌法、通信傍受法、国民番号法を成立させた。政治主導の名の下に内閣府の設置増強で中央省庁の大改革が実施され、地方分権改革で地方自治破壊と平成の大合併が実施された。2004年には国立大学の行政法人化、独立採算強要が始まり、2014年には学校教育法・国立大学法人法が改正=学長権限強化(トップダウン強要)・企業(財界)の大学経営参加・「国益に反する研究排除」が進められてきた。安倍首相が言うような憲法は押し付けられたものではなく、5ヶ月に渡る国会の議論を経て、成立させてきたものである。
 一つひとつの真実を広め、憲法を守り生かす取り組みを進めることが学問の自由を取り戻す力になる。

大阪市大が再び応募
 討論の中で、大阪市大が 2019 年度の防衛装備庁の募集に一件の応募を認めたことが報告され、厳しい抗議の声があがった。背景として大阪維新による府市統合・一法人二大学化、トップダウンの大学運営、10年で40億もの運営交付金削減があることが強い批判とともに報告された。


閉会の挨拶
軍学共同」を押しとどめる取り組み
(大阪革新懇 代表世話人 吉井英勝)

戦後の日本では「軍事研究」だとか「軍学共同」などという言葉を口にすることは異常なことでした。それを突破しようとして、軍事産業界と政府は、長期にわたってこれを覆す取り組みをしてきました。私が、最初に直面したのは1964年に京大工学部自治会役員になったころでした、自衛隊員を工学部の大学院生として入学させようとしてきた時です。

1988年に補欠選挙で参議院に送っていただいた時、科学技術委員会に「日米秘密特許協定」がかかってきました。日本の特許制度の原則は公開です。その代わり発明者の利益は特許権として認めてきました。ところが、アメリカの特許は、日本の特許庁に出願するだけで、どのような内容のものか不明のままにされ、日本がその後発明して特許申請をした時に初めて「米国特許が出願されている」「先願主義の原則で日本の申請は不許可」とされる「サブマリーン特許」が押し付けられました。とくに軍事特許として出されたものが民生機器の特許を圧迫し、「デュアルユース」だと言って大学などの研究に軍事 研究が忍び込む道筋が作られてきました。

1990年代からは、日米ミサイル防衛共同研究を中心にして防衛産業の基盤強化が図られました。三菱重工業などでの軍用機などのライセンス生産がすすみ、2008年には、国会で1969年に「宇宙研究開発は平和利用に限る」とした決議が邪魔だとして、「宇宙基本法」が強行されました。普通の人が聞くと「宇宙基本法」で宇宙物理学の発展に役立つものと考えられますが、実際には、この法律のなかった時代に小惑星イトカワの探査で、サンプリングを成功させて地球に帰還した「はやぶさ」のプロジェクトは進められました。

宇宙研究に全く関わりのない「宇宙基本法」が何故強行されたのか、その理由は「キラー衛星」「ミサイル防衛」「弾道弾開発」など国会決議に反して軍事に傾斜していくためには、「安全保障」条項を書き込んで、国会決議を亡きものにすることが狙われたのです。

こういう時代に道標となる1冊の図書があります。1963年1月に出された湯川秀樹、朝永振一郎、坂田昌一 3先生の「平和時代を創造するために」という岩波新書です。「科学者の社会的責任」が冒頭に出てきて、「科学者、広く知識人が、社会に対する責任を真剣に考え、世界平和のために貢献したいとおもうのが当然」と過去のことをふりかえりつつ、研究者の在り方について述べておられます。

 

書籍案内:

  • 『平和時代を創造するために―科学者は訴える』 湯川 秀樹 (編集), 朝永 振一郎 (編集), 坂田 昌一 (編集)(1963年 岩波新書)
  • 『 学問の自由と研究者のモラル 「軍学共同」問題から考える』
    日本科学者会議 監修 (本の泉社 定価 1000 円(税込み) )
    - 大学と軍事研究 科学コミュニティの役割
     (広渡 清吾 元日本学術会議会長)
    - 対談:科学者は社会といかに結びつくべきか
     (益川 敏英 ノーベル物理学賞受賞者,
      香山 リカ 立教大学教授 精神科医)