ヘーゲル研究会


ヘーゲル生誕250年に『法の哲学』を読む

 

ヘーゲル研究会の紹介
 
 ヘーゲル研究会は1990年代の半ばにJSA大阪支部の研究会の一つとして発足しました。当初は「ヘーゲル論理学研究会」として、ヘーゲル『大論理学』(武市健人訳、岩波書店)の全文を講読するものでした。そして約10年をかけて『大論理学』の講読を終了しました。


 その後、ヘーゲル『精神現象学』樫山欽四郎訳(平凡社ライブラリー)の講読を行いました。その際、ヘーゲルの原書や金子武蔵訳(岩波書店)も参照して翻訳も問題にしながら、意識の経験や、精神の歴史的発展についてのヘーゲルの議論を検討してきました。そして2019年12月で全文を読み終えました。


 今年2020年2月から『法の哲学』(藤野渉・赤沢正敏訳、中央公論社)を読んでいます。今年はヘーゲル生誕250年です。ヘーゲルはベートーベンと同じ1770年にドイツに生まれて、フランス革命の影響も受けながら哲学を研究しました。


『法の哲学』(1821年)は、いわゆる法哲学ではありません。「法(Recht)」とはドイツ語では“正義・法・権利”を意味します。現行版の『法の哲学』は、ヘーゲルがベルリン大学での講義のために書いた教科書に、学生が筆記したノートの一部からの抜粋が「追加」として収録されています。
その「序文」では「理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である」など、ヘーゲルの哲学的立場が示されます。そして第1部「抽象な権利ないし法」、第2部「道徳」、第3部「倫理」(家族、市民社会、国家)が論じられます。それは社会哲学の体系になっています。


 『法の哲学』はマルクスにも影響を与えました。マルクスはその批判をとおして史的唯物論を形成しました。また『法の哲学』は、かつてはプロイセン国家を擁護した保守主義の書物だとされました。しかし近年、ヘーゲルの講義録全体の出版と研究も進む中で、ヘーゲルは近代社会の自由の原理を論じた自由主義者であるという解釈もされています。その際、教科書と講義内容との違いも議論されています。さらに、ヘーゲルは人間の自由を社会的な共同として論じた点で、英米の「リベラリズム」の個人主義を批判する「コミュニタリアニズム」(共同体主義)からも評価されています。『法の哲学』は今日でも、批判的検討に値する書物です。


 ヘーゲル研究会は、原則として月1回開催して、テキストの全文を音読します。そして、翻訳の問題点やテキストの内容や背景などについて参加者が自由に議論をしています。現在、参加者の研究分野は、哲学、経済学、社会学、数学、生物学などです。
 関心のある方は、専門分野・職業等を問わず自由にご参加下さい。連絡先にメールをいただければ、研究会の日程などをご連絡いたします。


 連絡先:牧野広義 E-mail:pskhn276▲ybb.ne.jp (▲を@に変換)

 

これまでの例会から

『ヘーゲル論理学講義1831年』「序文」72節
『ヘーゲル論理学講義1831年』「序文」53節~
   参考文献:岩波文庫版『小論理学』
『ヘーゲル論理学講義1831年』「序文」51節~
   参考文献:岩波文庫版『小論理学』
『ヘーゲル論理学講義1831年』「序文」48節~
『ヘーゲル論理学講義1831年』「序文」46節~
   参考文献:岩波文庫『小論理学』松村一人訳
研究発表「マルクスとウエーバーの方法の差異」
『ヘーゲル論理学講義1831年』「序文」42節~47節
   参考文献:岩波文庫『小論理学』松村一人訳
研究発表「ヘーゲルにおける神とは何か」(仮題)
   参考文献:ヘーゲル全集17『宗教哲学』下巻
『ヘーゲル論理学講義1831年』「序文」40節~43節
   参考文献:岩波文庫『小論理学』松村一人訳
研究発表「ヘーゲルの神とは何か」(仮題)