原発建設に携わったものとして −2019 New Year Cafeに参加して

私は建築屋です。定年までの38年間、大手ゼネコン会社に勤めていました。福島の原発事故を見て、20~30代の頃、関電美浜、大飯などの新築・メンテナンス工事に関係したものとしては、ショックでした。福島以降はかなり勉強もし、原発ゼロの会にも入りましたが、なにぶん行動力に乏しく、自分の中にイライラが募るばかりですが、1月19日の日本科学者会議 2019 New Year Caféの案内を頂き、河野 仁先生の「福島原発事故の放射性物質の大気拡散予測解説」というところに目が行き、福島県の中通りという盆地沿いに汚染された大気が南下して行ったことを思い出しまして、その話を聞きたいと思い参加しました。


話は地上に近い高さでの大気の話で実感できるデータで面白かったです。空気より重たい固体でも微粒子状になれば、重力落下は極めて小さく、エアロゾルとして気体と同じような行動をするという説明は簡潔明瞭でよく分かりました。テーマは違うのでしょうが、政府は原発輸出がダメなら国内原発再稼働を気が狂ったように進めています。例えば再稼働した若狭湾にある原発から福島と同程度の放射性物質が放出されたと仮定した場合の、冬場における放射性物質の移動に関する地形的な研究が大切と思いました。冬期の日本海からの風は半端ではなく、私の知るところでは日本海側の建設物の海塩粒子飛来付着による劣化調査では海岸線から20Km以上離れた山奥でも付着が観察されており、日本海側は太平洋側とは比較にならないほど海塩粒子の飛来が顕著です。だから、昔は土木建設物と同じく原発の建屋外壁はコンクリート打ち放し仕上げでしたが、塩分付着による鉄筋コンクリートの劣化進行が激しいことが分かったため、今では原発は当然、海洋建設物は明石海峡大橋のアンカーレイジなど、すべて塩分遮断のために強固な仕上げ材が施されるようになりました。積雪地帯が琵琶湖西岸の今津辺りから長浜、関ヶ原付近に向けてあるように、窪地をすり抜けて濃尾平野あたりにはいとも簡単に達すると思われますし、冬期の西高東低の気圧配置を考えれば、高い山々を越える危険性も十分あるのではないかと危惧いたします。これは、近畿のみならず日本列島全体に及ぶ死活問題提起の1例だと思います。

K.Tさん(大阪支部会員)