【著書紹介】『近代科学はなぜ東洋でなく西欧で誕生したか -近代科学から現代科学への転換とその意義-』 菅野礼司著(2019年1月 吉岡書店)


JSAO会員 菅野礼司さんの新刊を紹介します。

「近代科学はなぜ東洋でなく西欧で誕生したか」哲学研究会でもテーマとして取り上げています。

菅野礼司さんのブログ「自然と科学」でも紹介されています。


近代科学の成立の意義は、その誕生自体が人類の文明史における一大エポックであるばかりでなく、それが以後の人類史を転換し発展させる原動力となったことを思えば、これほど大きな歴史的事象はないであろう。それゆえ、このテーマはこれまでに多くの科学史家の重要な課題として関心が寄せられ、研究されてきた。筆者は物理学が専門であり科学史が専門ではないが、科学論の研究とともに、興味をもってこの問題に取り組んできた。

古代から近代科学の誕生まで、東西の文化圏における自然観、思考形式(論理学、数学など)、技術、社会における科学の地位などを比較検討した。
表題の課題を考察する基本的観点と論点は、1.科学は思想・文化であること、2. 風土に基づく自然観と思考形式が科学に反映されていること、3.科学・技術の性格は、社会制度に規定された科学の目的と科学の担い手に依存、4.科学の質的進化には、その発展段階に適応した新たな自然観と思考形式を持った文化圏(民族)による科学の継承と発想の転換が必要ということである。

東西の文化圏にそれぞれの科学・技術が生まれたが、自然観や思考形式が異なるので、その性格・内容も異質である。
中国の思考法は具象的・実学的で、普遍化体系化に向いてない、インドのそれは普遍的・観念的で科学の概念も明確でなかった、西洋は分析的・論理的で、原理・法則を徹底して追求する傾向が強い。
古代ギリシアからアラビア(イスラム圏)・ラテン・西欧へと、科学の発展段階にマッチした文化圏によって引き継がれ、近代科学が誕生した。
中国、インドの科学・技術は中世までかなり進んでいたが、文化圏としてほぼ閉じていたために、尚古主義に陥り科学の進歩は停滞した。
近代科学の基磯にある自然観は機械論的、原子論的、数学的自然観である。これら自然観と「数学的実験科学」という思想は、東洋には生まれなかった。
最後に、近年の「科学・技術に対する批判」に関連して、近代科学から現代科学への転換の様相とその意義を科学の論理と方法、自然観を中心に考察した。
近代科学から現代科学への転進では、自然観や科学の論理などに質的転換がある。その様相と意義を概観した。

目次

序章
第1節 はじめに
第2節 科学・技術の社会的機能
第3節 「科学」とは何か
第4節 アプローチの方法
第5節 近代科学の特徴:方法と論理

第1章 古代文明における科学と技術
第1節 古代の四大文化圏における自然観と技術
第2節 古典科学の誕生:技術から科学への進展
第3節 中国文明と古典科学
第4節 インド文明と古典科学
第5節 ギリシア文明と自然哲学
第6節 古代科学文明のまとめ

第2章 中世における科学・技術
第1節 中国の自然観と科学・技術
第2節 中世インドの科学
第3節 アラビア科学(イスラム圏の科学
第4節 中世西欧の科学・技術
第5節 まとめ:中世における科学の継承と発展

第3章 近代科学の形成
第1節 近代物理学誕生の前夜
第2節 近代物理学の形成
第3節 近代科学の基礎となる自然観
第4節 デカルト物理学
第5節 惑星に関するケプラーの法則
第6節 学協会の設立
第7節 ニュートンの総合
第8節 第一科学革命
第9節 近代物理学の完成へ
第10節 科学の前線が拡大:物理、化学、生物学
第11節 西欧近代科学の性格と論理的特徴


第4章 現代科学-20世紀の科学の特徴
第1節 20世紀における科学の展開
第2節 第二科学革命
第3節 現代科学の論理の特徴

終章 21世紀の科学:第三科学革命
第1節 自然科学は「人類による自然自体の自己反映」
第2節 21世紀の科学


 

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