【論文紹介】「アフガニスタンにおける干ばつと洪水―気候変動の影響」河野仁


「アフガニスタンにおける干ばつと洪水―気候変動の影響」

野仁, 日本気象学会誌「天気」vol.66(12), 2019, pp.3-13


要旨

アフガニスタンでは,近年,大干ばつが頻繁に起き,また,洪水も起きているとの報告がある.ここではその背景となる気候データの把握を目的として,文献やアフガニスタンの気象観測データを使い,降水量の経年変化,変動,地域分布,季節変化についてまとめた.さらに,干ばつや洪水の状況と原因についても調べた.その結果によると,アフガニスタンで起きている干ばつは,3つの原因がある.(1)地球温暖化の影響を受けた急激な気温上昇(1.8°C/60年)と春の降雪量減少に伴う,標高4500m以下の山の夏の残雪の喪失による渇水,(2)春の降雨減少による干ばつ,(3)気温上昇による蒸発散量の増加.また,洪水の原因は次の2つがあることがわかっている.(1)春の強い雨による洪水,(2)春~夏の急速な雪解けによる河川沿い洪水.将来の気候変化についてもUNEP(国際連合環境プログラム)とNEPA(アフガニスタン環境保護庁)によって予測されており,地球温暖化に伴う気候変動の影響により,干ばつがさらに増えると予想されている.