JSAO真夏の研究会 「トリウチム=癌発症要因」説の分子生物学的根拠 ─ 福島原発「汚染水」海洋放出の科学的根拠を問う ─

JSAO真夏の研究会 8・24

「トリウチム=癌発症要因」説の分子生物学的根拠

─ 福島原発「汚染水」海洋放出の科学的根拠を問う ─

日時:8月24日(土)午後2時〜4時

話題提供:平田文男さん(分子科学研究所名誉教授)

オンライン開催:無料、どなたでも参加できます→終了しました

 

講演の要旨ですが、2023年8月、東京電力および日本政府は国際原子力機関(IAEA)や国際放射線防護委員会(ICRP)が定義した「科学的根拠」に基づいて、福島原発「ALPS処理汚染水」の海洋放出を開始した。そして、その政策に対する内外の反対や批判を「非科学的風評」として斥けている。東電や政府が依拠する「科学的根拠」なるものは放射性核種の「被曝許容濃度」である。したがって、この問題に関する真の批判はその「科学的根拠」に対する批判でなければならない。


筆者らは月刊「化学」(注)に発表した論考においてその「科学的根拠」に対する根本的な批判を行った。この論考で次の諸点を解明した。

 

① 原発汚染水に含まれる放射性核種による「被曝」は細胞内に侵入した核種による「内部被曝」であり、その被曝強度は通常の医療等で使われる放射線(外部被曝)に比べて、10億倍以上に及ぶ。

② 地球環境中の水は海洋と大気の間で循環系を作り、その総量は保存されている。したがって、「汚染水」を海水で希釈するという政府の論理は無意味である。(ALPS処理水の放出は地球水環境中にすでに存在する放射性核種の「濃度」を増加させている。)

③ 分子生物学的視点から、癌の原因となる「核種」の最有力候補は「トリチウム」である。トリチウム水(TOH)は通常の水(HOH)と全く同一の化学的性質を持っているため、口や鼻から体内に取り込まれた場合、血液等の体液(水溶液)に混じって、何の障害もなく細胞内(DNA近傍)に侵入できる。細胞内に侵入したトリチウムはDNAの「配列組み替え」を誘起し、(低い確率ではあるが)「新生命(癌)」に成長すると考えられる。他の核種の原子・イオンとは異なる。

④ 日本における癌の年次死亡率は、ほぼ直線的に増加しており、その直線の傾きは1945年(終戦)を境に増加する。他方、世界中の「原発」からは、毎年大量のトリチウム水が排出されており、その半減期を考慮したとしても、地球環境「水」中のトリチウム水の割合は、年々単調に増加している。したがって、「癌死亡率」における増加とトリチウム水の増加率との「相関」は明白である。

 

この③と④の点について論考をさらに進めており、当日に紹介します。

(注:「ALPS処理水」海洋放出の科学的根拠を問う. 平田文男・斉藤海三郎・澤田幸治, 「化学」vol.79 No.3(2024)P44-50 )