「近代科学はなぜ東洋でなく西欧で誕生したか」(続編)

 
日時: 12月14日(金)午後6時から

続編「近代科学はなぜ東洋でなく西欧で誕生したか」 講師:菅野礼司さん
 
近代科学の成立の経緯と意義について報告する予定が、一回ではすまなく、序論で終わってしまった。その続編を報告する。
 
【要旨】
今回、この課題を考察する基本的観点と論点は次の通り:
(1)科学は思想・文化であり、その文化圏(民族)の自然観と思考形式を反映、(2)その基礎は風土(自然風土と文化風土)にある、(3)科学・技術の性格は、社会制度に規定された科学の目的と科学の担い手に依存、(4)科学の発展・進歩には異文化圏(民族)による科学の継承と発想の転換が必要。
これらの観点から、東洋(中国とインド)、および西洋(ギリシア—アラビア—ラテン−西欧)を中心に科学・技術の発展過程を比較し、近代科学が西欧で誕生した経緯と理由を論ずる。
 
重要なことは、科学の進歩・発展は一つの文化圏に閉じていては限界があり停滞するということである。科学の進歩には、その発展段階に応じた自然観と思考形式が求められるが、それに応えうるには新たな自然観と思考形式をもった異なる文化圏(民族)に科学が移行し継承されてこそ可能である。そのことが科学の発展史を通して明らかになる。西では古代ギリシアからアラビア(イスラム圏)・ラテン・西欧へと、科学の発展段階にマッチした文化圏によって引き継がれ、近代科学が誕生した。東洋では、中国・インドともに、科学・技術の継承はそれぞれの文化圏内に閉じていたために、尚古主義に陥って自然観と発想が固定化された。そのために、中世まで先進的であった科学・技術の進歩は停滞した。
 
1.比較項目
自然観:宇宙観、物質観、生命観
思考形式:論理学、数学
科学の方法:分類方、実証法、数学記述
科学の社会的地位:科学・技術の役割と担い手
科学と宗教の関係
科学・技術の継承と発展
 
2.古代文明における科学と技術:技術から科学へ
古代の4大文化圏の技術的知識を受け継いで、古典科学(自然学)が誕生。
 
3.近代科学誕生に中世の果たした役割と意義 
ギリシアからアラビア(イスラム圏)へ移行、アラビア科学の特徴。
アラビアからラテン・西欧へ移行し、近代科学を準備。
12世紀、14世紀ルネサンス。
コペルニクスから空間革命へ。
 
中国、インド文化圏は閉じていた。そのため科学・技術は停滞気味。
 
4.近代科学の形成:科学革命
新たな科学のための哲学、
デカルト物理学
近代科学の基礎にある自然観:真空の存在、機械論的自然観、原子論的自然観、数学的自然観。そのベースにキリスト教の自然観。
近代科学の特徴−論理と方法。
 
5.近代科学から現代科学への転進の意義