【関西懇4月例会報告】新自由主義」に対峙する

* 新自由主義とは
 1970年代のオイルショックによって、世界経済が混乱していた頃、アメリカの経済学者フリードマンが提唱した考え方。20世紀に入って制度化された年金、失業手当、医療保険、最低賃金等の社会保障・福祉政策がケインズ主義の経済政策に基づく国家の介入=「大きな政府」で推進されてきたのに対し、徹底的な自由を善とするリバタリアニズムを根底に持ち、国防以外への政府の関与の最小限化、規制緩和、減税、関税の撤廃、民営化などによる「小さな政府」を提唱。市場での自由競争による富の増殖とトリクルダウンを特徴とする。

* 新自由主義の台頭
 アメリカではレーガン政権が「レーガノミクス」と呼ばれる大幅減税と規制緩和を行い、市場原理を大幅に取り入れ、イギリスはサッチァー政権が金融引き締めや、財政支出の削減、規制緩和を大きく進めた。日本では中曽根政権による民営化でNTTやJR,JTなどが作られた。その後、バブル崩壊、政治家・官僚の腐敗、少子高齢化が明らかになった90年代に、小泉政権による聖域なき構造改革、日本郵政や道路公団の民営化、地方への財政委譲、労働者派遣法の改正など、本格的な「小さな政府」への取り組みが進められた。

* 新自由主義がもたらしたもの
 従来の自由主義が信条や表現の自由などを重視する「国家による強制からの自由」を求めたのに対し、新自由主義は経済的自由競争を重視・絶対視することから、社会福祉や教育など従来公共部門が担ってきたものまで民営化。弱肉強食の自由市場で強者と弱者への二極分解が進み、「効率や生産性向上」のかけ声の下で安全が軽視されることになる。結果、JR西日本や東日本の事故、相次ぐデータ改ざん、多様性の否定、自然災害の大規模化、雇い止めやブラック企業、過労死、子どもの貧困などが常態化し、「自己責任」が国民に押し付けられる。
 構造的に弱者と「負け組」を生み出すことから、「小さな政府」と裏腹に、国内外の治安と秩序維持のために、巨大な警察・刑務所・軍隊、莫大な警察・軍事費が必要となる。安全への経費が削られ、災害が人災として巨大化することで、政府の財政負担が増えることにもなる。

* アベノミクスは「新自由主義」なのか
 アベノミクスはトリクルダウンを狙い、民営化や聖域の無い規制緩和、自己責任、社会保障削減、軍事強化、グローバル化など新自由主義政策を取る一方で、財政拡大を繰り返しながら中央銀行に意図的に大規模な金融緩和を強いる行為を行なっている。現在の日本の格差や分断は大企業の利益第一主義と政府による縁故資本主義が複合して作り出されたものだ。縁故資本主義で政権と癒着する大企業が利益を上げ、政権に近い人々が利益を上げる。20世紀以前に戻ったかのような労働環境破壊、基本
的人権破壊、生存権破壊が進められている。

* 「新自由主義」に対抗するポイント
 「新自由主義」的装いでかもしだす安倍政権や維新の自由や革新の幻想を打ち破るには、憲法を生かし立憲政治を取り戻すこと、民主主義・国民主権を取り戻すこと、子どもから大人まで主権者教育を徹底強化することが重要。