関西懇6月例会報告 水道部局の業務紹介と民営化問題

水道事業は、公営だが独立採算制を採用しており、水道料金が唯一の収入源である。料金制度は「逓増性」即ち、多く消費するほど料金が割高になるという仕組みで、命と直結するインフラとして、生活弱者への支払い配慮がなされてきた。また、料金の変更には議会の承認が必要となる。民営水道ではこれらが企業の自由となる。

一方、技術面では、変化する水源水質と需要量に対応するため、24時間体制で水質監視と取水・送水量の調整を行っている。大阪府域の自治体は、多くが大阪府広域水道企業団から供給を受けており、その水源である淀川は、木津川・桂川・宇治川や小支川を含めた水質汚染や、琵琶湖やダムにおける藻類の異常増殖による水質異常のリスクがある。水道水の水質基準は51項目が定められているが、基準にない多くの化学物質(放射性ヨウ素もその1項目)に関わる情報収集、測定方法の研究も欠かせない。また、水質監視・水質事故対応・渇水対応は、国土交通省や府県の河川管理者との公的機関相互の情報共有・連携が重要である。今まで、淀川水系はこの連携が上手く機能しており、水質異常や取水不能による断水はない。

 

水道水水質の重要項目の一つが感染症防止目的の消毒剤濃度であり、遊離残留塩素として0.1 mg/L以上である。水道事業体は、受水槽を経由しない蛇口にまで責任を持つ。大阪市内だけで5000kmに及ぶ管路の水質管理は機器だけに頼れない部分もあり、必要に応じて捨水する。また、ビル、マンションの貯水槽は滞留中に「塩素」が減少、微生物繁殖のリスクがあるため調査や啓発も重要である。違法な水道管接続による水質異常も繰り返し発見され、立ち入り検査 と管切断等、「公権力」の行使も行う。これらの業務は、利益を念頭に置く民間企業では難しいのではないか。

 <コメント>

  • 日本の水道は全国に「民営化」「規制緩和」というキーワードを流行らせた、小泉政権下で当時経済産業大臣だった竹中平蔵氏の主導により、すでに業務の大半を民間に委託できるよう法律が変えられてしまっている。
  • 2011年3月11日 東日本大震災当日に、民主党政権は公共施設の運営権を民間に渡し、民間企業が水道料金を決めて徴収できるようPFI法改正案を閣議決定してしまった。自治体が水道を所有したまま、運営権を民間企業に売却するという「コンセッション方式」の導入が2018年12月6日の衆院本会議で可決した。災害時に破損した水道管の修理などは、自治体と企業で折半し利益は企業のものになる。
  • 水道事業は一地域につき一社独占となる。つまり水道というインフラは利用者を引き付けるために、サービスの質や価格の安さで勝負しなければと、民間企業に思わせるための「競争」が存在しない。そのため民営化の弊害は、多国籍企業による利益優先のため、利潤が期待できる地域のみの参入となり、料金の勝手な値上げ、水道料金の支払えない世帯への供給停止。人員削減による技術者や保安員の減少で、災害時の対応や水道設備の再投資よりも株主への配当が優先される。
    水は命の問題であり、人権の問題である。